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相談事例 /

地方都市(東日本)

車検3,000台/年の老舗自動車整備工場、20年物の見積システムと4システム分断を段階移行で統合 ─ 全面刷新2,400万円見積を退け、初期180万円・月額85,000円で受付〜請求の事務作業を1日2時間圧縮した事例

業界
自動車整備業
規模
整備士12名・事務2名、年間車検3,000台・一般修理1,200台、月商4,500万円規模
対応期間
120日

課題

受付(紙伝票)・1998年導入の見積システム・Excel車検管理簿・弥生会計08・紙FAX部品発注が一切連携せず、顧客マスタが4箇所に分散。月次売上集計に事務2名で3営業日、見積〜請求リードタイム5営業日、見積書誤送付月3件発生。複数ベンダーの提案は全社が「全廃+新パッケージ一括導入」で1,800〜2,400万円。

解決策

全面刷新を退け、業務単位の段階移行を提案。フェーズ1:整備業向けクラウド受付システムで紙廃止(月28,000円)。フェーズ2:整備業特化SaaSで見積置換・顧客マスタ統合(月42,000円)。フェーズ3:Excel車検管理簿を法定点検記録簿機能へ統合。フェーズ4:弥生会計オンライン移行(月3,300円)と売上仕訳のAPI自動連携。総工期4ヶ月、初期180万円・月額85,000円(FileMaker保守月15,000円削減で純増70,000円)。

成果

事務作業1日4.5時間→2.5時間(2名合計で1日4時間圧縮)、月次集計3営業日→4時間、見積〜請求リードタイム5営業日→1営業日、住所不整合による見積書誤送付月3件→0件、Windows 11互換性リスク解消。年間84万円の運用費純増で2,400万円の全面刷新提案と桁が違う着地。

地方都市で38年続く自動車整備工場、整備士12名・事務2名で年間車検3,000台と一般修理1,200台を回す規模感の事業者です。

相談のきっかけは、社長からの一言でした。「ITコンサル経由で取ったシステム刷新の見積が、どこも1,800〜2,400万円で全面入れ替えを提案してくる。本当にここまで必要なのか、第三者の目で見てほしい」。DX補助金の申請期限が見えた時期で、迷いの色がはっきり出ていました。

## 現場で何が起きていたか

現場入りして驚いたのは、システムが古いことではありません。システム同士が一切繋がっていない事実でした。

受付窓口で書く紙の受付票(3枚複写)、1999年導入のFileMaker 5で動く顧客台帳、1998年導入の専用見積システム(Windows 95互換モードで何とか動作)、Excelマクロまみれの車検管理簿、スタンドアロン版の弥生会計08、紙FAXによる部品発注。顧客マスタは4箇所に分散しており、住所変更を一度に反映できる人間は工場内にひとりもいません。月次の売上集計に事務2名で3営業日、見積〜請求のリードタイムは5営業日。住所不整合による見積書の誤送付が月3件発生し、毎月のように謝罪電話を入れていました。

相談ベンダー3社の提案を見比べると、全社が「現行廃棄+新パッケージ一括導入」のシナリオでした。最安1,800万円、最高2,400万円。補助金を3分の2当てれば自己負担600〜800万円という計算は確かに成立しますが、補助金は精算後の後払い。初年度のキャッシュフローを見ると、年商4,500万円規模の会社が1,200万円以上を立て替える話になります。これは健全な提案とは思えませんでした。

## 全面刷新を退けた理由

弊社が最初に伝えた方針は明確です。全面刷新は推奨しない。

現場のUIを一度に入れ替えると、整備士の動線が一斉に崩れます。20年回している作業の流れは、紙の動きまで含めて筋肉記憶に刻まれており、それを丸ごと書き換えるリスクは過小評価できません。移行期間中の業務リスクも大きく、初年度の繁忙期と重なれば売上に直撃します。何より、20年物の見積システムが抱えるドメイン知識──工賃料金体系、過去履歴、整備士ごとの単価設定──を新パッケージへ完全移植できる保証はどこにもありません。

代わりに提案したのは、業務単位の段階移行でした。

## 4フェーズで何をしたか

フェーズ1。受付業務を整備業向けクラウド受付システムへ移行。月額28,000円。紙の受付票を廃止し、入庫時に顧客電話番号で過去履歴を即座に呼び出せる構成へ。導入から稼働まで6週間。

フェーズ2。見積システムを整備業特化SaaS(整備工賃マスタを業界標準で持つもの)へ置換。月額42,000円。1998年の専用システムから顧客マスタと過去見積3年分をCSV抽出し、初期投入。同時に顧客マスタの正本をこのSaaS側へ寄せ、受付システムとはAPI連携で同期する構成にしました。

フェーズ3。車検管理簿のExcelを廃止し、整備SaaSの法定点検記録簿機能へ統合。Excelマクロの職人だった事務員から作業を移管。Excel廃止に対する現場の抵抗は実際あり、特に「マクロでやっていた変則的な集計が再現できるのか」という不安が強かった。法定点検記録簿としての公式記録は紙で印刷・社判押印して保存する運用を残すことで合意を得ました。

フェーズ4。会計連携。弥生会計08のスタンドアロン版から弥生会計オンラインへ移行(月額3,300円)。整備SaaSから売上仕訳をAPI連携で自動投入する構成です。

総工期は4ヶ月。初期費用180万円、月額85,000円。既存のFileMaker保守料月15,000円が削減されるので、実質月額の純増は70,000円、年間84万円。2,400万円の全面刷新提案と比べると、桁が違う構造に着地しました。

## 効いた数字

導入後の数字を残しておきます。

事務作業時間が1日4.5時間から2.5時間へ。事務2名合計で1日4時間が消えました。月次の売上集計が3営業日から4時間へ。見積〜請求のリードタイムが5営業日から1営業日へ。顧客住所の不整合による見積書誤送付が月3件発生していたのが、ゼロに。Windows 11への移行で20年物の見積システムが動かなくなるリスクも解消しました。

## 失敗した話

成功例だけ書くのは誠実ではないので、失敗も残します。

フェーズ2で最初に選んだSaaSを1ヶ月半で乗り換えました。整備士が使う車両情報入力画面のUIが、現場の動線に合わなかった。発注前にデモ環境を社長と事務員だけでチェックして決めたのが原因です。整備士本人にスマホで触らせると即座に拒否反応が出ました。「ボタンの位置がオイル汚れの手で押せる場所にない」「車両ナンバー入力が4分割になっているのが現場感覚に合わない」。デモ環境のスクリーンショットだけでは見抜けない種類の問題で、フィールドテスト工程を組み込まなかった発注側の判断ミスです。乗り換えに伴うデータ再投入で2週間の遅延が出ました。

もう1件。会計連携で勘定科目マッピングの定義漏れがありました。整備売上、車検売上、部品売上、外注費の戻し、保険会社からの修理代振込。この5系統の仕訳定義のうち、保険会社からの振込分の定義を1つ漏らした結果、初月に売上計上の二重投入トラブル。事務員から「弥生のオンライン版、こんな計上の出方しますか」と問い合わせ電話が入って発覚しました。手動で12万円分の修正仕訳を入れる羽目に。会計連携は必ず1ヶ月並行運用と、初月の全仕訳目視確認をやるべきです。自動化したから安心、と思った瞬間に勘定科目の漏れが致命傷になります。

## 教訓

中小規模の業務システム刷新で、ベンダーが「全廃+新パッケージ」しか提案してこない場合、相見積もりで弾いて構いません。補助金の存在を当て込んだ過剰提案であるケースが大半です。業務を分解して業務単位でSaaSを当てる選択肢を提示できないベンダーは、その会社の業務理解が浅いか、提案できる手札が一種類しかないかのどちらかです。

整備士、看護師、調理人、現場作業員──現場で実機を触る人間が使う画面のUIは、本人に必ず触らせてから選定する。発注側の管理画面の使いやすさだけで判断するのは、ITに明るくない経営者が陥る典型パターンで、フェーズ2のやり直しはまさにここで失敗しています。

会計連携を入れる時は、最低1ヶ月の並行運用と初月の全仕訳目視を譲ってはいけません。これは経験則というより、何件かで同じ轍を踏んだ上での原則です。

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